SABURO YASHIDA
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【価値あるラーメンながらスープには課題が。】
累計1318軒目のラーメン店。
日曜13:30。
なんと店内は6割ほどが空席。
当店の至近にあるラーメン店『紬』は店外に並びがあったため、
入店した時点であれ?という不穏な気持ちに。
結果、残念ながら予感が的中した体験となってしまいました。
無化調、素材へのこだわりなどを耳にして、
またお人柄の良さそうな店主の方、従業員の方をSNSで拝見してかねてより伺いたいと思っていた当店ですので、
決してクレームであったり、おとしめたい意図などはありません。
僭越ながら、
このクチコミを読んだ方は是非足を運んでいただき、
「全然そんなことないじゃないか、こいつ舌がおかしいな」と思われたならそれはそれで良いことですし、
もし同じような感想を持たれた方がいましたら声をあげていただき、
その声がお店の方に届いて、さらなる美味しいラーメンへとブラッシュアップされていく事が何よりの願いです。
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ラーメンは2種。
・岩中豚と博多地鶏で支えた吸収豚骨 1,400円
・醤油拉麺 1,300円
吸収、という字面から只者ではない印象を受ける豚骨と、
逆にシンプル過ぎるネーミングがまた凄みを感じる醤油。
しかし上記の通り、残念ながらやや肩透かしを食らうこととなりました。
まず、麺も具材も大変美味しいです。
麺はバリッと硬めに茹でられており歯応えが心地よく、
とろけるチャーシューは目を見張る美味しさ。
しかしながら、
どちらもいただきましたが、いずれもスープに大きな課題を感じました。
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まず豚骨。
濃厚そうな見た目に反して、バランス的に甘み、旨みがかなり不足しているように感じました。
その影響もあって塩辛さも際立ってしまっている印象に。
説明すると、
日本人が美味しさを感じると言われる調味のバランスは、
和食で基本とされる醤油と味醂1:1を基本として、
煮魚なら味醂(砂糖でも)を増やしたり、
出汁を味わう吸い物なら味醂は加えなかったりと、
1.塩味(醤油・塩)
2.甘み(味醂・砂糖等)
3.旨み(昆布や鰹の出汁・その他素材から出るアミノ酸)
という主に3要素で調整されます。
そして醤油にL-グルタミン酸ナトリウム=“味の素”を加えると甘く感じるように、
人間の脳は甘みと旨みを混同して感じやすいようにできています。
そのため、自然の旨みだけでバランスを取る無化調のラーメンは、
含まれる旨み成分の量と質が不十分な場合、甘みが不足しているように感じられることがあります。
ですので化調を使用したラーメンを作る際と比較すると、
かえしには味醂や砂糖を、
また出汁には玉葱やりんごなど甘みの出る食材を、
より多めに使用して甘みを強めないと、
塩味が際立ってしまったり、旨みまで物足りなく感じてしまう、というケースがままあるのです。
長くなりましたが、
こちらの豚骨スープはその傾向にあると感じてしまいました。
出汁食材の量や種類を増やしたらすぐ解決するであろう話ですが、それでは原価が上がってしまいますので、
手っ取り早くかえしの甘みを強めれば、もっと旨みとコクを感じられるスープになると思われます。
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次に醤油。
こちらはまた全く違う問題が。
味わいは日本蕎麦を思わせる穏やかなバランスながら、
印象はその日本蕎麦のまま。
いえ、その蕎麦つゆよりもさらに優しい味わいのため、ラーメンを食べている気がしませんでした。
要因は出汁の部分ではなく、恐らくスープの油脂分の問題。
油脂が少な過ぎる、または油脂の風味が乏し過ぎる、あるいはその両方です。
ラーメンスープの構成要素はご存知の通り、
出汁、かえし、そして油脂です。
豚脂(液体ラードや固形背脂)、鶏油など動物系の油脂を基本に、
ネギやニンニクの風味を移した香味油や、
煮干し油、蝦油など魚介の香味油を動物系の出汁に合わせるパターンもありますが、
いずれにせよ、油脂がラーメンをラーメンたらしめます。
うどんつゆや蕎麦つゆに中華麺を入れた『黄そば』と呼ばれる麺料理が姫路などの関西、また山梨などで見られますが、
食べるとどちらかと言えば“そば”の印象が強く。
こちらの醤油拉麺は、その『黄そば』に近い気がしました。
もう一声、油脂を強調したり工夫を加えれば、
ぐっとラーメンらしさも強まり、印象も良くなるはずです。
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そして、ダメ押しのようになってしまいますがスープ以外にも問題が。
後に注文した和え玉(味付きの替え玉)ですが、
塩分値の高さが異常でした。
また茹で時間が不足しているため、提供直後に食べ始めても麺同士がくっつき、非常に食べにくいものでした。
・メロウ玉 400円
・ニボ玉 450円
そのまま食べてもスープにつけても、と言うのが和え玉の食べ方ですが、
そのまま食べても頭が痛くなりそうな塩辛さ。
連れも同様の感想でしたので、完全に私個人の好みとも言い難いと思います。
この和え玉が塩辛い現象は、過去に新丸子の『でこ』でも体験しましたが、
原因は恐らく和え玉単体でひと口、ふた口食べてレシピを決めているからではないでしょうか?
ラーメンを一杯食べ切った後では塩味の感じ方が変わります。
同じ状況で試食しなければ、適切な調味は難しいです。
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以上、長々と偉そうに申し訳ありませんが、
冒頭に記したように決しておとしめたい気持ちはありません。
お店の方や読まれた方にとって、わずかでも参考となれば幸甚の至りです。
ご馳走さまでした。